唯島友亮/芝浦工業大学大学院

『small images──小さな図版のまとまりから建築について考えたこと』 『MATALI CRASSET Spaces 2000-2007』 『真夜中』創刊号

1──『small images──小さな図版のまとまりから建築について考えたこと』
2──『MATALI CRASSET Spaces 2000-2007』
3──『真夜中』創刊号

●1
建築家作品集で最も印象に残ったのは石上純也『small images──小さな図版のまとまりから建築について考えたこと』(INAX出版)。個々のドローイングの美しさもさることながら、全ページに渡って非常に高密度かつ綿密に図版や写真が配置され、隅から隅まで建築家の意図が行き届いた濃密な構成に圧倒されました。 またフランスのインテリアデザイナー、マタリ・クラセットの作品集『MATALI CRASSET Spaces 2000-2007』(daab)も刺激的でした。彼女の他にも、アーティストのライアン・マクギネスや近藤恵介らによる、日常的な事物をアイコンのように扱って具象性の高い空間や平面をつくりあげていく手法は、現代的に再解釈されたポップアートのようでもあり、個人的には昨年最も興味を持った方向性でした。
雑誌だと、昨年創刊された『真夜中』(リトルモア)で展開された日常世界の中でまどろむような不思議な世界観が、服部一成さんによるギリギリまで抽象化されながら具象性を失わない独特のグラフィックと共に強く印象に残りました。


●2
去年は地方都市の市街地を使ったアートイベントが、例年になく数多く開催された年だったと思います。
《Central East Tokyo 08》 《Cafe in Mito 2008》のような展覧会では、空洞化した既存の都市空間の中に効果的にアート作品が挿入されており、都市の中の「凡庸な」建築群(大通り沿いに展開するペンシルビルなど)に潜む、日常を微妙に異化するような不思議な作用がうまく活用されていたように感じました。
また、実際に行けなかった展覧会の中で最も興味を惹かれたのは、イギリスのニューキャッスル/ゲーツヘッドで開催された《ピクノポリス》展。「帰国報告展」などで報告されていた光景からは、都市のオープンスペースに関わる新しいムーブメントの息吹を感じました。同様の試みは、サンフランシスコのグループ「REBAR」による《Park(ing) Day》(市地の駐車スペースを一時的なオープンスペースに変換するイベント)などにおいても展開されており、こちらも是非参加したかった都市系イベントでした。