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特集:200903 30代建築家 アンケート<

吉村靖孝

●1
郊外の記憶。戦後の郊外には「敷地」がない。そこにあるのは、建築的構想の起点たり得る固有性が剥奪された、ただの、そして大量の土地の残骸である。そういった郊外のあり方を憎むにしろ愛すにしろ、初期設定の一部として記憶しているのが僕らの世代だと思う。「敷地」に幻想を投影できない環境に育った僕たちのアプローチに世代的な共通性があるとすれば、敷地を読み込むというよりも、それ自体を積極的に書き変えようとする姿勢ではないだろうか。一方、郊外は「都心なき郊外」へと転機を迎え、都心には郊外的な「敷地」の欠落を引き継ぐかのような超高層集合住宅群が林立している。今この瞬間こそ郊外、あるいは郊外性について考えるべきと強く感じている。

●2
 
左:『メイド・イン・トーキョー』
右:『超合法建築図鑑』
『メイド・イン・トーキョー』をはじめ、都市のほころびを観察した塚本由晴の一連の仕事は、僕の都市への眼差しを根本から変えた。その不可逆的な変化と、一見すると特殊解に見えるそれらの建築の再現性に対する関心が掛け合わされて拙著『超合法建築図鑑』になった。再現性への関心はおそらく、前述の郊外的な敷地のあり方に対する関心と通底する。それを「かたち」の先に「かた(システム)」を見ると言い換えるならば、今度は菊竹清訓の名をあげるべきか。


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