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特集:201101 2010-2011年の都市・建築・言葉 アンケート<

田中浩也

●A1

2010年8月にアムステルダムで開催された、世界ファブラボ代表会議「FAB6」に参加した。「ファブラボ」とは、3次元プリンタや各種カッティングマシンを揃え、外注せず自分たちでほぼあらゆるものをつくるための工房である。筆者らは現在ファブラボを日本に準備する活動を行なっている(FabLab Japan)。
「FAB6」では、建築・服飾・家具・食品・バイオ・環境までさまざまな分野の専門家が集まり、垣根を越えて、デジタルファブリケーションとデザインのオープン(ソース)化について議論を行なった。すでにファブラボの機材だけで建築をつくってしまった事例もある。またソフトウェアから始まったオープンソース運動は、ハードウェア、そしてデザインにまで浸透しようとしている。こうした動きは、かつての「DIY(Do It Yourself)」や「セルフビルド」運動を想起させるところもあるだろうが、実際には、インターネット上での情報交換や相互協力、より柔らかな連携のもとに成り立っており、「DIWO(Do It With Others)」や「コミュニティビルド」と呼ぶのが的確である。
インターネットの初期に理念とした謳われた「一億総表現社会」は、すでに実現された。一般の誰もが文章や音楽・画像や映像をウェブ上に発信し相互に交換する状態となった。次にテン年代にやってくるのは「ものづくり」の領域の民主化、すなわち「一億総工作社会」である。そのキーアイテムは3次元プリンタである。「情報」の領域で起こったさまざまな革命が、「物質」の領域でも起こりうるだろう。2010年はその幕開けとして相応しい年になったと思う。

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MITにてProf.Larry Sassと筆者が開発中のオープンソース住宅キット(FabHouse)。 画像はLarry Sassによる2008年時点のプロトタイプ

●A2

2011年8月を目途にペルーのリマに工房を建設中である。日々、世界中にファブラボが立ちあがりネットワークで連携しながら動いている以上、毎日がイベントである。
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