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特集:201201 2011-2012年の都市・建築・言葉 アンケート<

吉良森子

●A1
自分が生きている時代を長い歴史のコンテクストのなかで意識するようになった。いままでは自分が生まれ育った時代(高度成長期─バブル─デフレ)が無意識のうちにベースにあったが、震災を契機に変わった。これまで当然なものとしてあった成長を前提とした社会・経済・都市・建築について、この5年くらいのあいだに、それは違うのではないかと考えるようになったが、これまではそこから抜け出すことができなかった。震災は日本の事象だけれど、このことによってほぼすべての先進国が縮小・定常・高齢化社会への移行を視野に入れることとなり、またそれによって生み出される変化や問題の共有が意識されるようになった。そしていままでは先進国と途上国の違いがなくなっていくであろうことを抽象的には予測していたが、スラム化・貧困化・民主主義の機能不全・ポピュラリズムによる政治・文化の大衆化による理性的ディスカッションの消滅などを通してリアリティであることを意識するようになった。

●A2

エリック・ミラン『資本主義の起源と「西洋の勃興」』(藤原書店、2011)

長年ヨーロッパに住んでいながら、理解することができなかった西洋社会のベースみたいなものがたいへんシンプルに説明されているように思った。資源の獲得と、自国製品のマーケットとして、つねに縁を取り込み植民地化していくことによって生まれた商人・市民の力。その力と王侯貴族的な力とが拮抗することによって生まれた都市文化・政治文化。拡大主義でなかったために商人・市民の力が制限され、トップダウンな権力構造を規範としたアジア・南アジア・アラビア文化。このことが現在でも社会生活のさまざまな側面で影響を与えていると実感する。それは都市におけるパブリックスペースへの考え方・意識でもそうだし、都市計画や景観の考え方もしかり。古い建物の保存の考え方にもそれが見られる。

『資本主義の起源と「西洋の勃興」』

●A3
《大阪中央郵便局》の保存をはじめとするいまかろうじて残っているモダンな建物の保存がとても気になります。
歴史的な日本建築だけでなく、近代の建物の保存の重要性・必要性を日本の文化の遺産として一般の人々に理解してもらう努力が重要になってきているのではないかと感じています。
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