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特集:201301 2012-2013年の都市・建築・言葉 アンケート<

ドミニク・チェン

●A1
2012年は、初めての単著『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック──クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』(フィルムアート)を上梓し、多様な領域の「作家」と対話する機会をいただきました。 そのなかでも、成瀬・猪熊建築設計事務所主催の「シェア研究会」にお招きいただいて、門脇耕三さんのモデレーションで馬場正尊さん、三浦展さんと公共と情報と都市のお話をさせていただきました。オープンガバメントの話なども交えて、公共的な役割を帯びるサービスを民間企業や市民団体、個人が行政に替わって促進することが増えているということを話しましたが、FabLab Japan発起人で『FabLife──デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」』(オライリージャパン、2012)を刊行された田中浩也さんが言うところのDIWO(Do It With Others)やソーシャル・ファブリケーションが社会システムにも徐々に及び始めていることを感じる機会が多い1年でした。
また、ペーパーレススタジオジャパンの今吉義隆さんのお誘いで、同社の勝目高行さんから欧米でのBIMの現状についてレクチャーいただき、吉村靖孝さんとBIMの可能性と問題点、そしてGitに代表される分散バージョン管理システムの社会的活用やデザインへの応用についてお話させていただく機会がありましたが、この話は建築設計だけではなく、広く空間やプロダクトのデザインのオープン・デザインの話にも接続されるものだと感じており、引き続きこうした社会アーキテクチャの構築方法に関する議論に参加したいと考えています。関連する動向として、株式会社ゲンロン刊行の『日本2.0 思想地図β vol.3 』の憲法草案にCCライセンスが付与され、Wikiで展開されましたが、同様の社会システムのオープンソース的構築にGit的機構が活用され、「社会の分散バージョン管理」という視点が従来のピアプロダクションやCGM、フリーカルチャーやオープンソースの正統的発展となるかと考えています。

門脇さんと今吉さんに「建築のオープンソース化によって社会はどのように変われますか?」という質問にご回答頂いたページ: http://www.mon-dou.jp/question/80/建築のオープンソース化によって社会はどのように変われますか?

●A2
近々では2013年2月3日(日)に渋谷のロフトワークで第5回CCサロンを企画しており、建築家の藤村龍至さん、社会学者の生貝直人くん、その他関連するゲストをお招きし、オープンガバメントとと建築の関係を考える会にしようと考えています。http://creativecommons.jpで告知を行ないますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

●A3
行政や政治が本質的にアップデートされない限り、被災地の復興、その他の地域での今後の自然災害への対応やリスク管理といった問題に対応することは難しいという感は強まっています。その意味でも、ウェブと政治の関係を掘り下げた著作の刊行、ウェブサービスのリリース、被災地の取材や支援といった活動を精力的に行ない続けた津田大介さんの周囲から、「新しい政治」の胎動が今後とも増幅されることを期待しています。
また、2013年に最初に読む本であり、10年間待ち望んだ本として、レビューを務めさせて頂いた鈴木健さんの『なめらかな社会とその敵』が1月に刊行予定です。津田さんの『ウェブで政治を動かす』を読んだ方や昨今のオープンデータ/ガバメントに関心のある人は必読かと思います。また、両者に明示的な関係性はないものの、プラトン的な賢人政治と全体主義の相関を批評したKarl Popperの『The Open Society and Its Enemies』と併せて読みたい内容となっています。


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