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特集:201301 2012-2013年の都市・建築・言葉 アンケート<

松川昌平

●A1
まず最初に取り上げたいのが、石川初さんの『ランドスケール・ブック──地上へのまなざし』(LIXIL出版、2012)です。昨年私は『設計の設計』(LIXIL出版、2011)のなかで「設計プロセス進化論」という論考を書いたのですが、それは、60年代に勃興した各種設計プロセス論や、90年代以降に注目されるようになったBIMやパラメトリック・デザイン、そして現在私が研究・実践しているアルゴリズミック・デザインなどの設計プロセスを、同じ枠組のなかに位置づけるものでした。ここで試みたことはまさに、『ランドスケール・ブック』の序のタイトルにあるような「YOU ARE HERE──自分の位置をマッピングすること」でした。『ランドスケール・ブック』はさまざまな事例を通して、「見えているものを、より広域の文脈で捉え直す」ことの批評性について教えてくれます。

石川初『ランドスケール・ブック──地上へのまなざし』/『設計の設計』

私はここしばらく「アルゴリズミック・デザイン」というスケールで物事を見てきましたが、私が2012年で印象に残った書物をより広域の文脈で捉え直すと、「フィジカル・デザインを構成する4象限」にそれぞれ対応していることに気がつきました。「フィジカル・デザインを構成する4象限」とは、先に挙げた『設計の設計』のなかで田中浩也さんが提唱した新しいものづくりのための見取り図です。そこでは、第1象限には「アルゴリズミック・デザイン」が、第2象限には「オープン・(リ)ソース」、第3象限には「ワールド・ワイド・ロジスティクス」、第4象限は「デジタル・ファブリケーション」が、それぞれ割り当てられていました。これまで非物質的な情報環境にとどまっていた「アルゴリズミック・デザイン」が、「デジタル・ファブリケーション」と結びつくことによって物質化できるようになり、「オープン・ソース」化されることで社会環境内で共有され、世界中でフィジカルなデザインを行なえるような「循環するひとつの系」ができつつあります。

下記に挙げる4つの書物は、偶然(あるいは必然?)にもこれら4象限にそれぞれ関連する書物だったように思います。優れた書評がすでに書かれていますので、それぞれの書物の内容について触れることはしませんが、スケール(視界の規模)が異なる4つの書物を、「フィジカル・デザインを構成する4象限」という広域の視点から捉え直すと、ひとつの物語として読めることに自分でも驚きました。これらの書物をガイドブックにしながら来年以降もさまざまな実践が生まれてくるような予感がします。

▶ 第1象限:「アルゴリズミック・デザイン」
渡辺誠『アルゴリズミック・デザイン実行系──建築・都市設計の方法と理論』(丸善出版、2012)
▶ 第2象限:「オープン・(リ)ソース」
ドミニク・チェン『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック──クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』(フィルムアート、2012)
▶ 第3象限:「ワールド・ワイド・ロジティクス」
吉村靖孝『ビヘイヴィアとプロトコル』(LIXIL出版、2012)
▶ 第4象限:「デジタル・ファブリケーション」
田中浩也『FabLife──デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」』(オライリージャパン、2012)


渡辺誠『アルゴリズミック・デザイン実行系』/ドミニク・チェン『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック』/吉村靖孝『ビヘイヴィアとプロトコル』/田中浩也『FabLife』

●A2
池田亮司さん待望の新作『superposition』が来年10月に京都で日本初公開される予定なので今から楽しみです。また市川創太さんの「Corpora project」初の建築作品が来年竣工予定とお聞きしているのでコーポラが建築として凝固した様を是非拝見したいです。さらに藤村龍至さんの「鶴ヶ島プロジェクト」のさらなる進化にも注目しています。
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