ENQUETE
特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<大向一輝
●A1
ウェブ上で再利用性の高いデータを公開する「オープンデータ」の動きは、政府・自治体などの公共機関から企業、そして芸術・文化領域まで広がりつつある。この分野のオープンデータも、目録や所蔵品のメタデータのレベルから、EUの文化遺産ポータルEuropeanaのようにデジタル化された書籍・絵画・写真データそのものを利用できるようにしたり
国内では昨年末に東京藝大で行なわれたイベント で、芸術・文化情報におけるデータのオープン化が研究・教育やビジネス、そして制作者個人の感情に至るまでどのような影響を及ぼすのかについて濃密な議論が行なわれた。多くの識者が指摘するように、ナイーブかつ全面的なオープン化を行なうだけでは長期的なエコシステムが構築できない。しかしながら、アテンション・エコノミーのなかで可視化されない情報はアーカイブの対象にもならないという現実のなかで、守られるべき情報の価値を見定め、そのためのアーキテクチャの設計が必要であることが再認識された。一方で、制作者や所蔵者自らが情報を開いていくことも重要である。OpenGLAM など、技術コミュニティとの連携によるオープン化の活動は今後も注目していきたい。
- 「芸術・文化情報とオープンデータ」(2013)
●A2
2014年はティム・バーナーズ=リーがウェブを提案して25年目にあたる
- 『Webの創成』(2001)
●A3
流行語にもなってしまった「おもてなし」を、どのように実装するかについて考えている。国力の低下が叫ばれるなかにあっても、個々のサービスやファシリティの品質は依然として高く、それを磨き上げていきさえすれば自然と達成されるという見方もあるだろう。一方で、単体としてのクオリティが高ければ高いほど、それらのつながりの悪さが目につくようになってきてもいる。Uber
やAirbnb といった海外の優良サービスはおしなべてユーザエクスペリエンスを競争力の源泉としているが、それらを仔細に見れば一連の動作と動作のあいだにあるつながりにこそ気が配られていることがわかる。都市レベルでつながりをデザインするためにはサービス・ファシリティを作り出す人々のあいだ、いわば他者同士の対話が必須である。コミュニティの創出や教育など課題は多いものの、2020年にはなめらかな都市として選手や観客を歓待したい。