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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

成相肇

●A1
夏にアンスティチュ・フランセで行なわれた中谷芙二子さんの出版記念シンポジウムが印象に残っています。出版された『FOG』は再読三読しています。それを踏まえて、豊田市美術館「反重力」展の中谷氏の体験も濃密なものとなりました。
加えて、年末のことですが、僕も末席を汚したシンポジウム「思想としてのテレビ 今野勉の映像表現とテレビマンユニオンに関する研究」がすこぶる啓示的で面白かった。松井茂さんが進めるテレビ研究にここ数年触れる機会があり、目から鱗の体験が引き続いています。テレビというメディアがこれほどヴィヴィッドに感じられるとは思ってもみなかった。



反重力展(豊田市美術館、2013年9月14日〜12月24日)


●A2
2014年は職場のある東京駅丸の内駅舎が竣工100周年を迎え、慌ただしくなりそうです。これに関連した企画のために、国鉄(というよりは電通)の一大プロジェクト、ディスカバー・ジャパン・キャンペーンについて調べており、70年代に関心が向いています([1]の回答と大いに関連しています)。どのような現代美術史の概説書でも60年代と80年代の接続が唐突に見える通り、70年代は停滞期としてスルーされてきたようです。主に概念芸術の時代として片づけられてきたのが大勢です。むろん話題に乏しい時代というわけもなく、美術館が扱いづらいコマーシャルな分野が賑やかだったというのが実状のようです。調べてみると特に雑誌の盛り上がりがおもしろく、読み漁っているところです。この頃盛り上がったPR誌の流れもたいへんおもしろい。埼玉県立近代美術館ほかで開催された70年代展が先駆けに位置づけられるでしょうが、より細分化してトピックを拾い上げたいと思っています。今さら○○年代という括りの有効性自体が怪しいところですが、自分の中での自然な成行きとして、ちょうどふさわしい領域が今は70年代にあてはまっているということです。

開館30周年記念展 日本の70年代 1968-1982(埼玉県立近代美術館、2012年9月15日〜11月11日)


●A3
2020年に開催が決定した「東京オリンピック」について、考えたこと、また現在考えていることについて、お聞かせください。
近くにあるスーパーマーケットの「オリンピック」の方が先に思い浮かぶくらいで2020年のオリンピック自体にはさしあたりまったく関心がありませんが、今後催されるであろう、64年の(第一次)東京オリンピックを回顧・再考する展観などに期待しています。2013年の東京国立近代美術館の「東京オリンピック1964デザインプロジェクト」の資料展示は見応えがありました。これからは直接的・間接的に波及した文化表象がいろいろと出てくることでしょう。思いつくのは横尾忠則による亀倉雄策ポスターのパロディ(これは傑作)とか、今野勉が東京オリンピックをモチーフにしたテレビ番組「土曜と月曜の間」(1964)、村木良彦氏が「東京オリンピック以降の若者たちの解体を横軸に」して演出したという番組「陽のあたる坂道」(1965)など。オリンピックの内容より、その受容過程や波及の方にこそ、僕らが学びうる教えが生きているはずです。

 
東京オリンピック1964 デザインプロジェクト(東京国立近代美術館 ギャラリー4、2013年2月13日〜5月26日)



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