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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

土屋誠一

●A1
現在私が在住している県でもあり、単に一地方の問題として片づけることのできないことなので記しておくが、昨年末のドサクサで行なわれた、仲井眞弘多沖縄県知事の辺野古埋め立て申請に対する承認を、大きなトピックとして挙げておきたい。私としては、沖縄県宜野湾市のど真ん中に居座る普天間基地は、沖縄の過重な基地負担と、そもそもの危険性とを考えれば、即刻撤去+県外への移設をすべきであるという立場をとる。しかし私が危惧するのは、辺野古の埋め立てが承認されたこと自体は勿論のこと、仮に最悪にも辺野古に新基地が建設されることになるとして、果たして本当に普天間基地が返還されるのか、ということだ。「普天間基地の辺野古移設」とはよく言うフレーズではあるものの、いったい普天間がいつ返還されるのかは、どこにも、そして誰もが明確にできていない。辺野古を埋め立てて、新基地を建設すること自体、面積としては相も変らぬ基地負担を沖縄が負い続けることになるとともに、自然環境を破壊することにしかつながらない。かつ、普天間基地までもが返還されないとなるならば、沖縄はさらに大きな負担を強いられることになるだろう。
この問題は、沖縄の都市開発とも大きく関わっている。普天間基地が撤去されることになれば、地理的には沖縄本島全体の心臓部ともなる普天間跡地が、沖縄県内はもとより、近隣諸地域や諸国と接続する、重要なハブとして機能するはずだからだ。しばしば悪意を持って語られる「基地依存」から脱却し、自立した、サステイナブルな経済圏を確保するためには、普天間が大きなキーとなるのは明白であり、このことは単に日本の一島嶼県の問題にとどまらず、日本という国家がいかなる方向へと舵を切っていくのかが問われている。しかし、対米従属の強化、現政権下の自衛力拡大の路線を見るに、沖縄の「基地問題」は、さらなる苦難に追い込まれつつあるように思われる。近隣諸国との外交関係悪化に、さらなる拍車がかかることを強く危惧する。
一方、震災後の、福島の原発の事後処理すらもままならず、原発事故それ自体が忘却の彼方へと(無理矢理?)追いやられているように見える今日、東浩紀氏らを中心に構想されている「福島第一原発観光地化計画」は、それがいかに破天荒に見えようとも、切実に外交の問題を考えているという点において、将来的なヴィジョンがそこには確実にあるように思われる。国土のデザインとは、一国の問題にとどまるわけではなく、外交問題でもあることを確認するための、モデルケースとしても捉えられるだろう。

『福島第一原発観光地化計画』思想地図β vol.4-2(ゲンロン、2013.11)


●A2
1とも関わるが、現政権に期待ができない以上、ポジティヴな展望は見いだせない。ただ、個人的な関心の範囲で言えば、美術や芸術全般において、特に日本国内で欠けているのは、個別的な作品や作家に対する分析的批評の言説であることを痛感している。大きな見取り図も必要だが、対象に対する微細な言説を欠いては、日本語で書かれる芸術についての言論は先細りになり、貧しくなる一方だ。この不備を是正するために、自主的なメディアを立ち上げることを構想中である。

●A3
そもそも国家イヴェントであるオリンピックに対して、不快感しかないというのが正直なところではあるが、ひとつ言えることは、何もオリンピックに日本の国家としての威信をかける必要はない、ということだ。オリンピックの開催によって派生するであろうさまざまな都市改造や文化イヴェントは、それに携わる人々はグローバルに開かれたものであるべきであって、日本国内の人材相互の利権争いにとどまっては、国際的に恥をかくだけだ。既にオリンピックの開催は決定してしまっているので、オリンピック自体の是非については特に言う言葉を持たないが、「やらないほうがマシだった」という結果になることだけは避けていただきたいものである。
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