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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

牧紀男

●A1
南海トラフの巨大地震では230兆円(日本の国家予算の2倍以上)の経済被害が出るという想定が3月に、首都直下地震では死者2万3千人、全焼・全壊61万棟、経済被害95兆円という想定が12月に公表された。また、大阪府では大阪市の中心部が水没するという想定も行なわれている。こういった被害想定の見直しは、東日本大震災の反省を踏まえて実施されたものである。実際に被害が発生した東日本大震災ではさまざまな被災地支援が、建築家により行なわれた。
首都直下地震では、火災による被害が甚大であり、密集市街地が問題ということになっている。私たちが「いいな」と思うような路地空間や建物が目の敵にされている。実際の被害が発生する前から、いい都市空間を守りつつ、災害の被害を減らすようなこころみについての取り組みがわれわれに求められている。何かが起きたときだけ、大騒ぎをするのはよくない。

●A2
今年は『復興の防災計画』(鹿島出版会)という本を書きました。『災害の住宅誌』(鹿島出版会)の続編です。東日本大震災の被害を踏まえて、今後発生することが予想される南海トラフ地震にどう備えるのか、という内容です。災害で被害が発生することを前提とした「まち」という考え方を「とりもどす」必要があると思っています。
 震災関連のイベントでは、神戸大学の槻橋さんが中心になって実施している「失われた街:模型復元プロジェクト」がすばらしいと思います。震災前の記憶に加えて、災害からの再建のプロセスも記録として残していくような試み(例えば、家を建てたら家の模型を街の模型の上に置きにくるとか)もあればいいな、と思います。

『復興の防災計画』(鹿島出版会2013.6)


●A3
防災・危機管理業界では、すでに東京オリンピックのBCP(Business Continuity Plan)、BCM(Business Continuity Management)ということが議論されています。BCP、BCMは業務継続計画、業務計画マネジメントと訳され、災害もしくは危機に見舞われた際に、迅速に業務を回復することを可能にするための計画・試みです。
被害が出ないことを前提とするのではなく、東京オリンピックが地震やその他の災害に見舞われることを前提として、災害に見舞われたらどうするのか、ということを考えておくことは重要です。オリンピック開催直前に東京が地震に見舞われたら、また、開催中に地震に見舞われたらどうするのか、といったことが検討されはじめています。
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