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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

蘆田裕史

●A1
2013年5月26日に東京都小平市で住民投票が行なわれた。これは小平市都道328号線計画の是非を問うものである。雑木林をつぶして道路を建設するというこの計画(しかも策定は50年も前とのこと)に疑問を抱いた住民の運動によって住民投票が行なわれることになったが、議会は後から「投票率50%を超えなければ開票しない」という条件をつけることになる。結果、投票率が50%を超えることなく、開票は行なわれなかった(この経緯については國分功一郎『来るべき民主主義』を参照)。
この顛末は、「都市は誰のものか?」というきわめてありふれた、だが根源的な問いを私たちに投げかける。都市の寿命は人間のそれよりも長い。であれば、私たちは一体誰のために都市計画を行なうのがよいのだろうか。もちろんいまここに暮らす住民のためを考えることは重要だが、小平市の事例からは数十年先の未来を見据えた計画を行なうことの必要性を改めて感じさせられる。2013年は新国立競技場のデザインの是非が話題となっていたが、歴史と建築、環境と建築、政治と建築といった点において両者の問題は通じるものがあるだろう。

國分功一郎『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(幻冬舎、2013)


●A2
自分が関わったプロジェクトの話になるが、2013年7月にファッション専門のギャラリー「gallery 110」を京都に開設した。運営メンバーは私のほか、関西在住の研究者、キュレーター、デザイナーなどである。
これまで日本にはファッションに特化したギャラリーというものはなかった。もちろん、多目的利用が可能なスペースを借りてファッションの展覧会やショーを行なうことは珍しくない。だが、ほかのジャンルに目を向けて見ると、写真、テキスタイル、建築、グラフィックデザインなど、ひとつのジャンルに特化したギャラリーが多少なりとも存在する。このようなギャラリーの活動を追いかけていくと、ジャンルの歴史がおぼろげながらも見えてくるだろう。
インディペンデントの組織である「gallery 110」に、今後どれだけのことができるかはわからない。だが、10年後、30年後にふりかえったとき、少しでも2010年代のファッションが見えてくるような場にできればと思っている。

●A3
オリンピック会場となる新国立競技場のデザインの是非についてさまざまな建築家や批評家が論じていたが、門外漢としてはそこで交わされている議論に少なからぬ違和感も覚えた。
ザハ・ハディドのプランは確かに環境や歴史を踏まえたものではないかもしれない。だが、現在日本で評価されている建築家のなかには同様に、実際にその建築を使う人々、周りに住む人々のことを考えているようには見えない建築家も少なからずいるように思われる。そうした建築のことは無視しておきながら、新国立競技場にだけ集中砲火するというのはいささか不公平だという印象を受ける。建築家のエゴの塊のような派手な建築ばかりではなく、地味であっても使い手や環境のことがきちんと考えられた建築をきちんと評価していくことが、今回の件と同じことを繰り返さないために必要なのではないだろうか。
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