イントロダクション──趣旨説明
最初に今回の展覧会およびギャラリートーク、記念シンポジウムという一連のイベントをオーガナイズした者として経緯と趣旨、流れを説明させていただきます。明治大学建築学科は、戦中期に明治大学が設立した東京明治工業専門学校を大学に取り込むかたちで、1949年に工学部建築学科として開設されています。堀口捨己は創立の立役者の一人であり、神代雄一郎も創立当初から教師陣の一角を占め、構造・環境分野の他の先生方とともに、本学科の歴史的核心をつくってこられたわけです。1965年にはキャンパスが駿河台・猿楽町から生田へ移り、その頃に堀口先生が退任され、神代先生は1993年まで本学科の教員を務められました。堀口捨己と言えば、分離派建築会の思想的な主導者であり、近代の代表的建築家として、また茶室や数寄屋の研究者としても高名です。堀口の設計図面等の膨大な資料群は堀口研出身の木村儀一先生(元明治大学教授)が継承・保存されています。今日、基調報告していただく藤岡洋保先生も整理・研究にご尽力されてきました。一方、神代先生は近代建築思潮史、日本建築の意匠論、デザイン・サーヴェイ、そして建築評論でよく知られていますが、大変残念なことに再評価がまだ非常に少ないのが現状です。旧蔵資料は、本学科で兼任講師として日本建築史を教えていただいている松崎照明先生がお預かりになられていたものを、一昨年前から本学科で保管・整理していますが、まだ緒についたばかりです。今回は明治大学で保管されている堀口捨己・神代雄一郎両先生の膨大な資料を、そのごく一部ではありますが、明治大学博物館の特別展示室にて皆様に広く見ていただく機会ができたことを嬉しく思っています。
さて、今日のシンポジウムはいささか大上段に構え、「建築家とは何か」というテーマを掲げていますが、その背景には今、建築家像が大きく揺らいでいるということがあります。堀口・神代両先生は「建築家とは何か」という問題を考える時に外すことのできない先達であり、単に回顧ではなく、これからの世代に両者の問題を繋いでいくことが重要だと考えています。本日の登壇者が年齢的に非常に幅広くなっているのはそういう考えからです。最初に基調講演をお願いするのは東京工業大学教授の藤岡洋保先生です。東工大で学ばれ、本大学の助手をつとめられた後に東工大に戻られました。藤岡先生の長年にわたる堀口研究は『表現者・堀口捨己--総合芸術の探求』という著書で集大成されています。次に、神代先生については、僭越ですが私からご報告させていただきます。その後に、コメンテーターという立場で建築家の磯崎新さんから同時代的な証言と今日的な問題提起をいただきたいと思っています。後半は、ワシントン大学のケン・タダシ・オオシマさん、建築家の日埜直彦さん、藤村龍至さん、美学の分野から天内大樹さんという若いメンバーでディスカッションを試みることにしました。昨今、建築家と歴史家が過去と現在を結び合わせながら議論する機会が耐えて久しく、このような場がなければ建築史も建築家もやせ細っていく一方ではないかという危機感を持っています。堀口・神代両先生という御先達と、われわれがそのなかにいるところの歴史過程、そして現在という地点について、皆さんと考えていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
さて、今日のシンポジウムはいささか大上段に構え、「建築家とは何か」というテーマを掲げていますが、その背景には今、建築家像が大きく揺らいでいるということがあります。堀口・神代両先生は「建築家とは何か」という問題を考える時に外すことのできない先達であり、単に回顧ではなく、これからの世代に両者の問題を繋いでいくことが重要だと考えています。本日の登壇者が年齢的に非常に幅広くなっているのはそういう考えからです。最初に基調講演をお願いするのは東京工業大学教授の藤岡洋保先生です。東工大で学ばれ、本大学の助手をつとめられた後に東工大に戻られました。藤岡先生の長年にわたる堀口研究は『表現者・堀口捨己--総合芸術の探求』という著書で集大成されています。次に、神代先生については、僭越ですが私からご報告させていただきます。その後に、コメンテーターという立場で建築家の磯崎新さんから同時代的な証言と今日的な問題提起をいただきたいと思っています。後半は、ワシントン大学のケン・タダシ・オオシマさん、建築家の日埜直彦さん、藤村龍至さん、美学の分野から天内大樹さんという若いメンバーでディスカッションを試みることにしました。昨今、建築家と歴史家が過去と現在を結び合わせながら議論する機会が耐えて久しく、このような場がなければ建築史も建築家もやせ細っていく一方ではないかという危機感を持っています。堀口・神代両先生という御先達と、われわれがそのなかにいるところの歴史過程、そして現在という地点について、皆さんと考えていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。