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149 韓国[2]
2011年9月、旧暦のお盆にあたる秋夕(チュソク)が明けたばかりの時期に韓国を訪れた。秋の澄んだ空気のなか、丹青(タンチョン)と呼ばれる彩色とともに、周囲の風景と見事に調和した厳かな佇まいが印象に残る。ここでは7日間の調査で撮影した、韓国各地の重要な古建築の写真を紹介したい。
仁川空港到着後、まずは韓国東南部の慶尚北道へ行き、そこから慶尚南道、忠清南道、忠清北道と周って、水原、江華島へ向かい、最後にソウルへと戻ってくるというコースをとった。以下では韓国における寺院建築様式について、簡単にではあるが代表的建築の例とともに概説する。
韓国建築の構造形式には、疎組にあたる柱心包式、詰組にあたる多包式、そして韓国建築独自の様式である翼工式がある。柱心包式は高麗時代以前にもっとも一般的に用いられていた様式であり、浮石寺無量壽殿や修徳寺大雄殿などがこの形式で建てられた代表的傑作とされている。朝鮮時代初期の柱心包建築を代表する建築としては銀海寺居祖庵霊山殿、観龍寺薬師殿、開目寺円通殿、後期のものとして高山寺大雄殿などがある。
多包式は高麗時代後期に朝鮮にもたらされたものと考えられており、朝鮮時代に入ると規模の大きな建物はほとんどがこの様式で建てられるようになった。多包式建築を代表する寺院建築には、朝鮮時代初期の例である鳳停寺大雄殿、後期のものとして観龍寺大雄殿、傳燈寺大雄殿および薬師殿などが代表的である。
五重塔の形に造られた法住寺捌相殿、特異な平面形式をとる通度寺大雄殿など、朝鮮時代後期にはそれまでは見られなかったような多彩な多包式建築が登場し、韓国の建築文化がその独自性を表わすようになっていったとされている。
[謝辞]
今回は多くの方々のご協力のおかげで特別に許可を得ることができ、貴重な写真を撮影させていただいた。韓国・漢陽大学校の韓東洙教授、東京大学大学院博士課程の金碩顯氏、建築装飾技術史研究所の窪寺茂所長、東北大学大学院の野村俊一助教に、この場をお借りして心より御礼申し上げたい。
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