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71 ルーアン

「ルーアンの印象」
ルーアンといえば、もっとも著名なルーアンの大聖堂とともに、モネの描いた連作を思い起こす人も多いだろう。かく言う私もモネの描いた対象を見たくてルーアンに足を運んだ。
ルーアンは、パリ・ドゴール空港からバスで約2時間ほど、パリから北西方向に約120キロの距離で、セーヌ川の河口近くにあり、ノルマンディー地方の商業港として栄えている。ルーアンはノルマンディー地方特有の木造建築でも著名で、第二次世界大戦の戦火で多くの被害にあっているが、中世に建てられたものもいまだ数多く現存しフランスの文化遺産として指定されている。
近代化されている周辺部から、ノートルダム大聖堂(正式名称)へ向かう手前には、14世紀に作られた大時計のあるアーチが見える。かつてはそこまでが旧市街地で門に閉ざされていた。アーチをくぐり大時計通りを抜けると、聳える大聖堂が目前に見える。
さらに近づくと大聖堂手前の広場が凹んですり鉢状になっている。そのためか尖塔の最上部は151メートルに及ぶフランスで一番高い大聖堂であるがあまり威圧感は感じない。どちらかと言うと、ファサードの繊細な尖塔群は、レースのような軽さを感じる。それはゴシック様式の発達によりファサードに構造的な負担が少なくなったことにもよるだろう。
モネは、1892年と1893年の2度に渡って合計33点の「ルーアンの大聖堂」を描いている。その数年前の「積みわら」から始まるモネの連作はとりわけ同じモチーフを違う時刻や天候で描くというところに最大の特徴がある。
モネは、時刻や天候によって変わる大聖堂の瞬間、瞬間の「印象」を描き分けるために、大聖堂の向かいにある建物(旧税務署)の2階に間借りし、別の時刻ごとのキャンバスを並べて描きわけていたという。
モネは、そこを含め3方向から大聖堂を描いたが、午前中に描かれた作品が多いという。はじめは、西向きのファサードでは日陰になるので、光が溢れる午後の方が魅力的なのではないかと思ったが、しばらく滞在しているうちに、頂上付近の鋭角的な尖塔の方から徐々に陽光が漏れ落ち、微細な光と影のハーモニーを奏で始めていた。それを見てなるほど、モネが午前中の大聖堂に惹かれた理由が分かった気がしたのだった。



[撮影者:三木学(ライター、IT開発ディレクター)]

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pic  旧市場広場

pic  サント・ジャンヌ・ダルク教会

pic  大時計[1] [2]

pic  旧税務署(現ルーアン観光案内所)[1] [2]

pic  ノートルダム大聖堂[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8]

pic  サン・トゥーアン修道院[1] [2]

pic  サン・マクルー教会[1] [2]

pic  サン・マクルー回廊[1] [2]

pic  ルーアン美術館[1] [2] [3] [4]

pic  木造建築[1] [2]

pic  市街風景[1] [2] [3]


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