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都市の「シェルター」をリサーチするプロジェクト「Shelter Studies」。サンパウロ、カラカス、ボゴタ、ニューヨーク、ジュネーヴ、パリ、ロンドン、イスタンブール……世界の都市を巡り、そこに住まう人々への30のインタヴュー|Shelter Studies is project to research various 'Shelter' by Keisaku Fukuda+Robert Schmidt+Gonzalo Velez. They interview 30 key persons living in vulnerable urban space.|Powered by MT 2.65Syndicate this site

氏名: マリア・セシリア・ロスキアーヴォ・ドス・サントス
職業: サンパウロ大学建築都市専門学群准教授
国籍: ブラジル
収録日: 2006年10月14日


マリア・セシリア女史は、建築家やデザイナーではない。元々は哲学専攻であり、哲学を通して美学、デザインへと関心が繋がっている。同時に、そのプロセスの中で、ブラジル独裁政権による自分の恩師たちの追放を経験し、また、ブラジル社会の中で出されるゴミとそれを糧に生活する人たち、ホームレスの人たちへと関心が繋がって来たという。彼女がデザインを考えるとき、そこには常にコミュニティーがあり、社会システムがある。ソーシャル・デザインという考え方。デザイナーが暮らすコミュニティーや社会の中の問題に対して、デザインによって何が提案できるのかという問い。僕らが何かをデザインするとき、そこにはまず、クライアントという他者がいるだろう。彼らを満足させることなしに、デザイナーは仕事を続けていくことができない。しかし同時に、デザイナーとクライアントの恋愛関係を成立させている、そのコミュニティーや社会そのものが立ち行かなくなったとき、デザイナーという職業は消滅するだろう。つまり、デザインするということは、常にコミュニティーや社会と共にある。女史の発するソーシャル・デザインという問いを、まずは共有すること。そして、自分の暮らすコミュニティーや社会を生き、センシティブであること。それが私たちの可能性だと思う。

まず、あなたが学生の頃、なぜソーシャル・デザインを研究テーマとして選んだのか教えていただけますか?
私は建築家ではありません。哲学者です。哲学者として、私が学士号をとったのは、まさにブラジルが独裁政権下にある頃でした。 そして、そのことは私の学生時代の中で、大きな影響を及ぼしました。なぜなら、私を指導してくれた教授の多くが、この独裁政権によって亡命することを余儀なくされたからです。そしてこの時から、もちろんまだ私は若かったのですが、私の国の教育システムを変えるために、批判的な態度をもって関わっていかなければいけないと思ったのです。

私がソーシャル・デザインについて考える時、私は、いかにしてすべての人のためにデザインするかということを考えています。なぜなら、シェルターを持つ権利は、基本的な人権であり、誰もがその権利を有しているからです。しかし、私が暮らすブラジルの社会では、すべての人が家を持つ権利を保障されている訳ではありません。これは闘いであり、すべての人が向き合うべき挑戦だと思います。そしてまた、21世紀の建築や都市計画は、この問題に関わらなければならないでしょう。

ソーシャル・デザインとの関連のなかで、あなた自身の夢や希望を教えていただけますか?
それは夢ではありません。われわれの職業において、社会的に特別に排除された環境にある人たちについて考えることは、もはや避けることができません。ご存知のように、恵まれた環境にある人たちのためだけにデザインするというのは、もはや不可能です。もちろん、恵まれた環境にある人たちは、あらゆる種類のデザインを所有することが可能でしょう。しかし、21世紀はもはや夢ではなく、恵まれない環境にある人たちのために仕事をするのがわれわれの義務になるでしょう。社会的災害の被害者たち、物理的な災害の被害者たち、そして恥辱や偏見など人的災害の被害に晒されている人たちなど、われわれはあらゆる種類の人たちを、自分自身のプロジェクトに含めて考えていかざるをえないでしょう。これはとっても大変なことだと思います。しかし、私の希望は、私自身やもう年老いた人たちではなく、あなたのような若い人や子供たちが関わっていくことにこそあるのです。それぞれの異なった方法で、人類を救うためにね。そうなればいいね。「おめでとう!」