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都市の「シェルター」をリサーチするプロジェクト「Shelter Studies」。サンパウロ、カラカス、ボゴタ、ニューヨーク、ジュネーヴ、パリ、ロンドン、イスタンブール……世界の都市を巡り、そこに住まう人々への30のインタヴュー|Shelter Studies is project to research various 'Shelter' by Keisaku Fukuda+Robert Schmidt+Gonzalo Velez. They interview 30 key persons living in vulnerable urban space.|Powered by MT 2.65Syndicate this site

氏名: ジャネット・カルデロン/ドリス・バレット
職業: 「Faith and Happiness」ディレクター/同、コーディネーター
国籍: ヴェネズエラ
収録日: 2006年10月22日


眩しい光かゆらゆらと差し込む、午後のコミュニティの教会で僕らはインタヴューをした。自らが住むコミュニティのために、自分のできることをやること。ジャネット・カルデロンとドリス・バレットの2人は、それを行動で語っていた。僕らは普段、何気なく「コミュニティ」という言葉を使うが、それは「ある」ものではなく、自分たちで守り、話し、育て、つくっていくものであるということを、自らの子供を育て、そして同じようにコミュニティに住む子たちに対しての母親として、女性としての視点を投げかける2人に語ってもらった。

お名前とご職業を教えて下さい。
JC──ジャネット・カルデロンです。「Faith and Happiness」のディレクターであり、協会の社会活動におけるマネージャーをやっています。

DB──ドリス・バレットです。ここの家族部門のコーディネーターであり、こことヘルス・センターのマネージャーです。

どうして、ここでの活動をはじめたのですか?
JC──直感よ(笑)。

DB──クリスチャンのコミュニティから活動をはじめ、ここでの活動をやるようになりました。いまとなっては実際のところはどうだったかはわかりませんが。

JC──私が住んでいる、ここカトゥーチェではつねにさまざまな問題があり、そういった問題について憂慮する人々のグループがあったのです。彼らは、ただ家にいて、誰かがどうにかしてくれるのを待つのではなく事を起こしたいと思ったのです。思い切って家を出て参加という意志に、さまざまなかたちで目にすることができます。私たちのまわりで、実際に人々が参加しはじめたことで、彼らの意思をサポートし、また現実化していく可能性が見えたのです。

DB──暗いところで灯りが見えたら、明るいほうへ行こうと思うわよね。

カトゥーチェのポジティヴ/ネガティヴな面を教えて下さい。
JC──すべてのコミュニティと同じように、多くの連帯意識があることでしょうね。いまは、私も分譲マンションに住んでおり、近所の人を知りません。一方で、私がこの近隣地域に住んでいたころは、もし息子が病気になれば、近所の人を夜中に叩き起こしてでも病院に連れて行ってもらったことでしょう。誰かがドアのところまで助けに来てくれたかもしれません。もし現在、同様のことが起きれば、車で10分のところに住んでいる兄弟を呼ばなければいけないでしょうね。この近隣地域には連帯感、助け合い、そして慎ましやかな態度があります。
ネガティヴな面としては……、そうですね、低レヴェルの生活に慣れてしまっていることでしょうか。これが、窓の外へのゴミの投げ捨て、他人に迷惑をかけることを気にしない原因でしょう。そのほかのネガティヴな側面としては、資金が少なく、賢い子どもたちが学校をやめてしまうことです。公立の学校は非常にレヴェルが低いです。そこでは、コンピュータを使った授業も、英語の授業もないので、もしそこで学ぶ子どもたちが大学に行きたいと思っても、レヴェルの低い大学にさえ行くことができないのです。
日々、可能性は少なくなり、偏見は強くなっています。この付近の子どもたちは、配管工かレンガ職人になると思われていますが、実際にはそれを望んでおらず、高い期待が存在する一方で、それに見合う準備ができないのです。

DB──私は、ネガティヴな面は親の子育てにあると思います。ここでの生活習慣に慣れてしまっているので、生活を改善しようともせず、手に入るはずのより良い機会も得ようとしないのです。人々は人生設計も、夢も、目標もありません。子どもたちは挑戦することを恐れるあまり、もっとも安易な道を選びがちです。より自分にあった仕事を得るのではなく,麻薬を売るほうを選ぶのです。とても良い考え方を持っている家庭もあります。彼らは自らの価値観や基準を持ち、子どもに人生の目標を追い求めるように後押しします。連帯と協力によって、良い行ないができるように私たちはポジティヴに考えることができるようになるのです。

カトゥーチェでの夢、そして希望を教えて下さい。
JC──生活の質を改善し、公共サービスを有する地域をつくりあげることです。それから、人々が育っていくのを見つめること。暴力や麻薬によって表舞台から隠れてしまった多くの子どもたちを見てきましたが、その解決策を見つけ、彼らが家族とともに成長する姿を見てみたい。そしてまた、私たちの努力の象徴として、またこの街への貢献として川を綺麗にしたい。あなたたちが次にここを訪れるときには、泳ぎ、飲み、そしてここの水を使って料理ができるようにね。新しいものを人々に見てもらうために、エコ・ツーリズムのための公園もつくりたい。あるいは、カトゥーチェが「本当の街」になって、私たちの子どもたちが、なにかの専門家として人生のなかでの目標を追い求めるのを見ることが夢ですね。