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特集:201101 2010-2011年の都市・建築・言葉 アンケート<

村上祐資

●A1

○2010年4月15日:Barack Obama, "By the mid-2030s, I believe we can send humans to orbit Mars and return them safely to Earth. And a landing on Mars will follow. And I expect to be around to see it."
バラク・オバマ「2030年代半ばまでに、われわれは人類を火星周回軌道にまで送り込み、安全に地球へ帰還させられるようになるだろう。そして続いて火星への着陸も達成されるだろう。私はそのことがすぐそこまできていると予期している」
○2010年6月3日:模擬火星旅行実験「MARS 500」開始
○2010年6月13日:小惑星探査機「はやぶさ」帰還
○2010年8月5日:チリ鉱山落盤事故発生
○2010年10月13日:チリ鉱山落盤事故、最初のひとりが無事に救出される

2010年10月13日、チリのサンホセ鉱山の地下に閉じこめられた33人のうちの最初のひとりが救出された。偶然にもこの救出が行なわれている最中に、個人的にネパールからタイ経由で日本へと飛行機を使って移動していたのだが、どこの国の空港でもチリからの中継が流されていた。 2010年8月5日に事故が発生してからは、新聞や報道上で長期に閉鎖・隔離された空間で生活することを強いられた人間がどのような状況に曝されるのかが詳しく解説され、また米国からは同じく極限環境で生活を送る宇宙飛行士を支援するNASAの専門チームが現地に派遣された。日本からも宇宙飛行士の室内衣服を製造するメーカーから、宇宙用の消臭下着などが救援物資として送られた。
この事故が発生する約2カ月前の2010年6月3日には、ロシア医学生物学研究所(IBMP)では、520日におよぶ模擬火星旅行実験(MARS 500)が開始された。さまざまな選抜を経て選ばれた6人のクルーが、火星への往復(往路250日、火星滞在30日、復路240日)を想定したシミュレーション実験が、閉鎖・隔離された約550平米の空間の中で現在行なわれている。 2010年4月15日には、米国オバマ大統領が2030年代半ばまでに有人火星探査を実現させる旨の声明を発表し、また無人惑星探査の分野においても2010年6月13日に日本の「はやぶさ」が無事に地球へと帰還し、惑星探査技術はこれまでの片道切符から往復探査という次の段階へと足を踏み出した。

20世紀が戦争の世紀であったならば、21世紀は災害の世紀になると言われている。チリ鉱山落盤事故の作業員たちの身に起きた出来事は、もしかしたら人事ではないのかもしれない。今年起きたチリ鉱山落盤事故は、宇宙で養われた極限環境下で生きるためのノウハウが、おそらく初めて地球上の生活へと役立てられたケースだろう。建築や都市が災害に曝される可能性が高まってるいま、宇宙の住まいと地上の住まいを隔てる垣根はいずれなくなっていくのかもしれない。

●A2

○2011年1月:宇宙ステーション補給機「HTV2」打ち上げ
○2011年4月以降:スペースシャトル退役
○2011年6月から約半年間:古川宇宙飛行士ISS長期滞在
○2011年11月:MARS 500終了

相次ぐ延期で本来であれば2010年中に退役するはずであったが、いよいよ2011年にスペースシャトルは最後のフライトを迎える。スペースシャトルの退役により、今後は国際宇宙ステーション(ISS)への有人輸送手段はロシアのソユーズ宇宙船のみとなる。ロシアがソユーズの運賃値上げを検討するなど、早くもシャトル引退後の各国の駆け引きが始まっており今後どうなるかが気になるところだ。そんななか、日本は1月に宇宙ステーション補給機 「こうのとり」2号機(HTV2)を打ち上げる。シャトル引退後はISSへ大型機器を輸送できるのは「こうのとり」のみとなるため、日本のISS計画における地位を向上させることとなる。スペースシャトル引退により、今後しばらくのあいだは航空宇宙分野の世界構図は大きく変化することだろう。2009年の「きぼう」日本実験棟の完成により、今後は日本人宇宙飛行士がISSで長期滞在する機会も増えるため、宇宙空間での生活がわれわれにとってもますます身近に感じるようになるに違いない。
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