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特集:201201 2011-2012年の都市・建築・言葉 アンケート<

柄沢祐輔

●A1
私自身はアルゴリズム的な方法によって離散的なネットワークをどのように建築として形式化するかという探求を行なってきたが、今回の震災ではその有効性と意義がより増大したと思う。ひとつには都市スケールの開発が均質なものに陥ってしまうことを、アルゴリズムによる設計方法はある程度回避することが可能であるということ。これは筆者が本年上梓した『設計の設計』(INAX出版、共著)において、新自由主義に基づく均質な都市風景に対する異化の方法として提示したが、状況は震災の後の復興計画においても当てはまる。都市の設計が均質なものになることを防ぐために、アルゴリズム的な方法による離散的なネットワークを都市に挿入する手法は、今後より一層求められるであろうし、またそれは同時に小さな住宅から集会所、公共建築までスケールを問わないという特徴がある。

●A2
今年10月に発刊された博報財団の機関誌『にほんごっ子』第2号において巻頭の特集記事としてまとめられた中沢新一、藤村龍至、柄沢祐輔による鼎談。ここでは震災の後の日本の復興、都市規模の復興から日本文化の復興に至るまで、アルゴリズム的な手法がいかに有効であるかが徹底的に討議された。中沢新一氏は日本文化の本質が「キアスム的」特徴を持っていること、また今回の震災はその本質を露呈させたと語るが、そのキアスム的な空間を建築や都市空間として構築するために、アルゴリズム的な手法がいかに有効であるかを筆者らは議論を展開している。コンパクトな鼎談ながらも編集部によるキーワードの解説も充実しており、アルゴリズムの射程の今日的な意味を確認するための手引きとなるものとなっている(『にほんごっ子』は入手無料の機関誌、入手はこちらからhttp://bit.ly/sG2Uvn)。

『にほんごっ子』

●A3
『プロジェクト・ジャパン 日本語版』(レム・コールハースほか著、平凡社、2012年発売予定)。コールハースによるメタボリズムに関する莫大なリサーチを収めた書籍の日本語版。圧倒的な量の生々しいヴィジュアルと資料の集積とそこからダイレクトに伝わってくる60年代の建築界の熱量。私たちがここから読み解くことが可能なのは、建築という領域が持っている本来的な可能性であり、その可能性は日本の近代の成熟とともに一旦社会から失われていったものではあるが、再びどのようにその可能性を取り戻すことが可能であるかという問いは、今後の建築の世界においては大きな議論の対象であると思われる。
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