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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

南泰裕

●A1
槇文彦の20年にわたる活動をまとめた『漂うモダニズム』が、2013年に読んだ書物のなかで、強く印象に残った。建築に関わる一人ひとりが、指針のないままに大海原を漂っている現在の状態を、静かに含蓄のある態度で語っている槇の言葉には、しばし黙考を誘われる。20世紀初頭の、福音書としてのあるいは神託としてのモダニズム。その展開の先に、さまざまなねじれがあらわになってきて以降もなお、「モダニズムとは何か」という問いがかたちを変えてい生き続け、ほぼ1世紀近くを迎えている。
言語のアナロジーによってモダン・アーキテクチャーを考察する視点は、モダニズムの建築自体の出自を再確認しており、わかりやすい。徹底的に微分された文化的志向と、世界を隈なく覆い尽くすグローバリズム。この対極的なものの同時存在様態をなす現在の状況に対して、私たちはどのような態度を取るのか。〈モダニズム〉とは、そうした状況を測定し、新しい思考を紡ぐための、ねじれた概念装置であり続けていることを、再確認させられる。

槇文彦『漂うモダニズム』(左右社)


●A2
2013年に、私の研究室において「New Plat 2013」というプロジェクトをまとめ、発表した。これは、現在の東京の築地市場が、近い将来に豊洲へと移転することから、築地に残されることになる約23ヘクタールあまりの膨大な跡地に、これからのありうるべき都市空間を想定した計画案である。築地という、東京都心の広大な更地をどう再編成するか、ということが、2014年以降、いよいよ具体的な都市的課題となることは確かで、こうした試みが、そのための試金石をなすのでは、と考えたからである。

「New Plat 2013」のイメージモデル。2013年6月に、南洋堂書店にて同プロジェクト展を開催
[製作:国士舘大学南研究室、2013]

全体配置図。敷地に運河のネットワークを張り巡らせ、多様体のように全体を織り上げた計画案


●A3
2020年の「東京オリンピック」について思うのは、「それ以前/それ以降」ということである。祝祭は一瞬で通り過ぎる。なので、オリンピックそれ自体よりも、2020年までの準備・再編成期間と、2020年以降の将来を、どのように突き合わせて考えてみるか、ということが肝要なのではないかと思う。
20世紀以降の東京は、関東大震災と第二次大戦というカタストロフィからの復興により、構造的にも社会資本の数々も、大きく変化した。旧赤坂プリンスホテルのような超高層も、近年、あっさりと解体されてしまったので、関東大震災からほぼ100年を迎える2020年頃を境として、20世紀半ばにつくられた東京の超高層の数々が、解体されていくのではないか。もはや東京には開発のための未踏の地は次第になくなってきている。なので、都市の欲望は今度は、過密化した超高層群の自己抹殺へと向かう可能性がある。そのときに、21世紀型の新しい東京の再編が、行なわれることになるだろうか。
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