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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

小林恵吾

●A1

ロッテルダムという長年住んでいた小さな町から、突如東京という巨大都市に移り住むことになってまもなく迎えた2013年は、膨大な情報の渦や忙しない社会の流れといったなかで、個々の出来事の重要性をあまり振り返る暇もなく、あっという間に過ぎ去ってしまったという印象がとても強い。

そんななかでも印象に残っている出来事といえば、やはり東京オリンピックの決定が大きいが、エドワード・スノーデンがモスクワのシェレメチェボ空港のトランジットターミナル内に1カ月以上滞在していたことは、非常に興味深かった。映画『ターミナル』のトム・ハンクスではないが、現実としてどの国にも属さない領域において、長期間にわたって住まうという行為や、彼自身がバーチャル内の機密データを持ち出し流出させたという事実によって引き起こされたということもまた映画のシナリオのようで、われわれを取り巻く世界が一昔前のフィクションをなぞっているような感覚を覚えた。その後、ちょうどスノーデンがロシア亡命をはたし空港を出たころ、ベトナムの密林の中から今度は40年間ものあいだ、国家や社会と一切の関係を持たずに生活していた親子二人が発見された。全部ひっくるめて、まるでB級SF映画が現実化したような世の中だと思った。

●A2

個人的にも関わっているが、第14回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展。レム・コールハースのディレクションのもと行なわれる今回のビエンナーレは、「建築家ではなく、建築のためのビエンナーレ」と彼が言うように、全体として例年のものとは性質の違ったものになると期待している。

●A3

東京オリンピックについては多方面でいろいろと議論がなされたり、教育の場でも課題テーマとして扱われたりと、それなりに世間を騒がしてはいるが、正直なところ自分とは遠いところでことが進んでいる印象が強く、あまり関心が持てていない。ゼネコン各社のJVや、大手広告業と行政、都と国といったプレーヤーによって、知らないうちにあらゆることが進められているという印象を持っている。6年先という時間を長いとみるか、短いとみるかは人それぞれかもしれないが、7年後に決定直前の昨年途中で保留となった多くの課題にまた向き合うことになると思うと、その現実から逃避するには6年という時間はあまりにも短く、問題に立ち向かうためのモチベーションを持続するにはあまりにも長過ぎると個人的には感じている。


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