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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

光岡寿郎

●A1

日常化する国際展

2013年も都市型では「あいちトリエンナーレ」★1、地域型では「瀬戸内国際芸術祭」★2が開催され、それぞれ好評のうちに幕を閉じた。なかなかまとまった休みもとれず、直接訪れることができたのは前者だけだったが、個人的には初回、第2回の横浜トリエンナーレのような熱気を感じ、心地良い疲労感を覚えた。一方で今年は、国際展開催レースから遅れをとっていた北海道(2002年に開催された「デメーテル」★3の扱いは難しいが)や四国でも、それぞれ「札幌国際芸術祭」★4や「道後オンセナート」★5の開催が予定されており、2000年代初頭の国際展の「ハレ」感は確実に薄れつつある。
この状況を鑑みると、今後国際展をめぐっては、国内の諸都市間での差異化と序列化への動きが活発になっていくのではと感じている。2013年10月28日、29日の中日新聞に掲載された「あいちトリエンナーレ」座談会をめぐる一連のやりとりには、そんな側面がかいまみえていた。記者の「新聞/マスメディア」上の批判と、企画者側の「twitter/マイクロメディア」による応答はそれ自体、メディア研究の一事例としても興味深かった。とはいえ、座談会に出席していたある記者(記者E)の「あいちならでは感」の強調はきわめてナイーブな反応ではあったけれども、それゆえに日常化の進んだ国際展が、今後おしなべて行政、ボランティアスタッフ、地域メディアから求められる要件を象徴していたとも思う。そもそも国際展は、先行するグローバルな言説のネットワークのうえに依拠しているという点で★6、ドメスティックな意味でのヴァナキュラーさにはそぐわないアートイベントだ(し、求めれば求めるほど「国際的」な国際展としてはつまらなくなる)と考えていることもあって、今年の、そして2010年代を通して日本で開催される国際展が、どのように変わっていく/変わっていかないのかを淡々と見守っていきたい。

★1──あいちトリエンナーレ
URL=http://aichitriennale.jp/
★2──瀬戸内国際芸術祭
URL=http://setouchi-artfest.jp/
★3──デメーテル
URL=http://www.demeter.jp/j/
★4──札幌国際芸術祭
URL=http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/
★5──道後オンセナート
URL=http://www.dogoonsenart.com/
★6──参考=光岡寿郎(2012)「国際展〈論〉のポリティクス」(『芸術と環境』[論創社]所収)

街中に散在する展示会場(上=名古屋)、街中に散在する展示会場(下=岡崎)

●A2

KoSAC(Kokubunji Society for Arts and Culture)

手前味噌は承知なのだけれども、東海大学の加島卓さんと一緒に「アート」「デザイン」「社会」を緩やかなテーマとした月例の会を昨秋から始めた。美術大学に通う学生や、研究を続けたい大学院生のすべてが大学に残る必要もないだろうし、社会人として生活するなかであらためて突き詰めて考えていきたいことも生まれるだろうと思う。その受け皿が大学とカルチャーセンターしかない社会はそれなりに息苦しい社会な気がしていて、面白いと感じているテーマを持つ大人が、ともに目一杯面白がれるような場としてKoSACを開きたい。以前このアンケートでも触れた、地域に根ざしたシェルター型のアートスペースに刺激を受けながら出した僕なりの応答になればと考えている。会のコンセプト、および2014年1月29日の第5回KoSACについては以下のURLをご参照いただきたい★7,8

★7──KoSACのコンセプト
URL=http://toshiromitsuoka.com/blog/2013/08/08/1137/
★8──第5回KoSAC「アート×キャリア×ネットワーキング」
URL=http://toshiromitsuoka.com/blog/2013/12/26/1254/

KoSACの様子(第3回KoSAC、2013年11月6日。これっきりエンナーレとの共催)

●A3

建築保存の行く末

これは建築や都市計画を専門としない僕は確信が持てないところもあるのだが、2020年の東京オリンピック開催に向けて東京の再開発が進むのだと思う。再開発にともない、一定の建築物の建て替えが想定されるが、この過程でいかなる建築保存についての社会的コンセンサスが形成される/されないのかに関心を持っている。ザハ・ハディド設計による新国立競技場が建設される過程の半ばですでにこれほどメディアを賑わわせていることからも、建築がいかに「面倒臭い」文化財なのかを再認識することができたと思う。建築の保存は、公私の所有権のせめぎあい、保存自体にかかる莫大なコスト、地域住民の合意形成と、文学作品や美術作品といった「モノ」の保存とはまったくレベルの異なる水準の困難を複数抱えており、例えば神奈川県立近代美術館の敷地返還問題のように、この数年折に触れて表面化してきた建築保存の問題が噴出する契機となるのが、オリンピックにともなう都市の再開発なのだろうと漠然と感じている。


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