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109 北欧[1]──デンマーク+スウェーデン
北欧デザインの家具や食器類、映画『かもめ食堂』のヒットなどがあいまって、日本では北欧ブームが続いている。近代建築においてもアアルト、アスプルンド、ヤコブセンなど、優れた巨匠を生み出してきた。
今夏、ヘルシンキ工科大学のサマースクールに参加する機会を得て、デンマーク、スウェーデン、フィンランドの北欧3国に約1カ月間滞在した。北欧に着いたのは8月も終わりの頃。21時頃に夕方が始まり、その後長い時間トワイライト(薄暮)が続く。かと思うと、3時頃にはもう朝がやってくる。初めはただただ目を丸くするばかりであった。
ヘルシンキではその日の作業を終えると、夜はチームメイトや先生らとサウナに入る事が多かった。ビールを片手に、ある学生は語る。「ぜひ次は冬のフィンランドを体験しに来てください。なぜ内装に白を多様するのか、なぜ厳しい寒さに反して大きな窓をつくるのか、身体的に分かるはずです。冬は断続的に吹雪に見舞われることも稀ではなく、長い暗闇の後に晴れ間を見せたときには、人々は自然と公園に足をのばしているものです」。
日本人に比べ、光に対する思想が大きく異なるのだ。天井から壁を伝い、舐めるように落ちるトップライトやハイサイドライトの巧みで多様なデザインを生む原風景としての光環境という点において、太陽光の恵みを当たり前にして温々と過ごしてきた日本人は、ハンディキャップがあると言わざるをえないだろう。また、北欧の人々にとって、内装の「白」は光を生理的に欲するが故に生まれた色であり、日本の現代建築の流行にみられる白とは一線を画するといえる。
北欧の物価には泣かされるものがあるが、光の国北欧は建築を学ぶ者にとって必訪の場と言えるだろう。
なお、今回はデンマーク+スウェーデン篇とフィンランド篇にわけて、北欧の建築写真を2カ月にわたり紹介する。
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pic シュミット・ハマー・ラッセン《デンマーク王立図書館新館》
pic ロレンツ+ハンス・ファン・ステーンウィンケルほか《旧証券取引所》
pic グンナー・アスプルンド《ストックホルム・市立図書館》
pic A・アンデルバーグ/P・セルシング & N.Tesch《旧王立オペラハウス》
pic イバー&A・テングボム《ストックホルム市立コンサートホール》
pic D・Hellden+A・テングボム《ストックホルム中央再開発地区》
pic ラファエル・モネオ・バレス《ストックホルム近代美術館・建築博物館》
pic ヨーラン・モンソン&マリアンネ・ダールベック《ヴァーサ号博物館》
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