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143 中国(浙江省)

143 中国(浙江省)

ここに紹介する写真は、2012年1月に浙江省を一週間ほど旅行したときに撮影したものである。
近年の中国におけるいわゆる「地域主義」的な建築のなかで、中国西部では成都の劉家琨(リウ・ジアクン)、中国東部では杭州の王澍(ワン・シュウ)がその代表的作家だと言えるが、両者の性質は微妙に異なっている。前者がモダニズム→批判的地域主義というオーソドックスな流れのなかにいるのに対し、失われつつある職人的な技や材料を用いながら強烈な形態に落としこむ後者は、そのような単純な理解を拒む位置にいるように見える。おそらくだからこそ「新しい中国」の建築家として、王澍はプリツカー賞を得たのだろう。開発地区のなかで撤去された古建築の材料をまとって建つ《寧波博物館》や、約20棟の建築を王澍が手がけた《杭州中国美術学院象山キャンパス》など、その王澍建築が集中するのが浙江省である。
王澍の制作したパビリオンもある《金華建築公園》は、ひとつの地方都市に国内外の有名建築家の作品が集結した、いかにも中国らしいプロジェクトである。ヘルツォーク&ド・ムーロンやフェルナンド・ロメロなどの作品の全体を統括するのは艾未未(アイ・ウェイウェイ)だ。こうした建築オールスターとでも言うべきビッグプロジェクトは、たとえば、内モンゴルの砂漠に100組の建築家による建築をあつめた「オルドス100」など近年の中国建築における特徴のひとつだが、完成に至った例はいまだほぼ見られない。その意味で《金華建築公園》は、規模はずいぶん劣るとはいえ、やや珍しい事例だろう。とはいえ、敷地横で進められる宅地開発をよそにいまでは完全に廃墟になっているが(ニュースにもなった)。
最後に、この地域にはすぐれた中国古典庭園や西洋風の近代建築も多く残されているが、時間の都合上、現代建築を中心に廻わらざるをえなかったことを付記しておきたい。



[撮影者:市川紘司(東北大学大学院)]

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