PHOTO ARCHIVES
155 北京──21世紀の建築
ここで紹介する写真は、中国の首都・北京における2000年以降に竣工した現代建築である。
よく知られているとおり、2008年のオリンピック開催に向けて北京では大規模な開発が都市のあちこちで進められていた。「鳥の巣」や「CCTV新社屋」など、大手設計院や外国人建築家たちの手による数多くの巨大建造物は、急速に経済発展する中国の象徴的存在として、日本をふくむ当時の外国建築メディアに注目されたから、実際に北京に訪れたことのない方々にもよく知られているところだろう。現在では、こうした都市更新の「熱」はある程度おさまっていると言えるが、しかし永らく続いた開発ラッシュの代償として、胡同と四合院からなる北京の「古き良き空間」の多くが失われてしまっている。今後は、伝統的空間を有効に残しつつ開発するようなプロジェクトにも期待される。
中国建築の2000年代とは、個人で建築家として活動する「アトリエ派」が台頭した時代でもある。北京でも、中堅どころの張永和や王昀らをはじめ、スタンダード・アーキテクチュアやMAD(馬岩松)といった多くの若手建築家が事務所を構えている。世代が下るにつれ、受けた教育や活動の範囲が国際化していることも、いまの中国ならではだろう。しかし上海などの南方にくらべると、首都・北京においては、その活躍の度合は依然として小さい。北京で目立つ大規模プロジェクトの多くは、国内の設計院や、国外の大手組織設計事務所によるもので占められているのが現状である。
こうした状況のなかで、大手デベロッパー「SOHOチャイナ」による開発プロジェクトは興味深い。彼らは、ザハ・ハディドや隈研吾ら海外のスターアーキテクトを積極的に起用し、アイコニックな巨大建築の建設を進めている。空間構成としても、街路から多方向にアクセスが可能な構成を採用することが多く、閉鎖的になりがちな一般の中国建築とは異なった様子を見せている。デベロッパーであるにもかかわらず、社長たちみずからがアイコンとして歓声とともにメディアに登場することも頻繁にあり、その発言が有する影響力は大きい。おそらくいまの中国建築業界のなかでもっとも注目すべき団体のひとつであろう。
→ 「公開の原則と著作権について」
pic ノーマン・フォスター《北京首都国際空港第三ターミナル》
pic PTW+ARUP(オーストラリア)《北京国家水泳センター》
pic ヘルツォーク&ド・ムーロン+アイ・ウェイウェイ《北京国家体育場》
pic スタンダード・アーキテクチュア《アーバン・バックヤード》
前の記事:156 あいちトリエンナーレ2013
次の記事:154 図書館[4]
Photo Archives|五十嵐太郎